第15回 リビング学習は場所より空気|伸びる家,伸びない家

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■ リビングで勉強させているから安心?

「うちはリビングで勉強させています」

そう聞くと,なんとなく
良い学習環境のように感じるかもしれません。

親の目が届きやすい。
分からない時に,すぐ聞きやすい。
一人で部屋にこもるより,勉強を始めやすい。

たしかに,リビング学習には良い面があります。

ただ,ここで親のあるあるがあります。

リビングで勉強している姿を見ると,

「ちゃんと勉強している」
「これなら安心」

思いやすいのです。

でも,リビングで勉強しているから伸びるのではありません。

リビングが,勉強しやすい空気だから伸びるのです。

■ 集中できないリビングもある

私自身,訪問型の家庭教師として,
リビングでレッスンをしたことが何度もあります。

その中には,テレビがついたまま,
こたつの周りをウサギがぴょんぴょん跳ねている,
というご家庭もありました。

また,レッスン中にネコちゃんが
部屋に入ってくることもありました。

私自身,以前ネコを飼っていたので,
個人的にはむしろうれしいくらいでした。

ペットがいることも,家族が同じ空間で過ごすことも,
それ自体が悪いわけではありません。

ただ,レッスン中となると,話は少し変わります。

そのような状況では,
教える側も集中するのが難しくなります。

まして,子どもにとってはなおさらです。

親としては,
「少しくらいテレビがついていても大丈夫」
「家の中だから,これくらい普通」
「ペットも家族だから,いつも通りで大丈夫」
と思うことがあるかもしれません。

でも,子どもが問題を考えている時,
音や動きは思っている以上に集中を切ります。

リビング学習は,生活の近くで勉強できる良さがあります。

しかし,生活の音や動きが入りすぎると,
「勉強する場所」ではなく,
生活のついでに机に向かう場所
になってしまうことがあります。

■ 静かでも疲れる空気がある

一方で,
静かであればそれでよい,というわけでもありません。

別のご家庭では,親御さんがかなり離れた場所で
料理をしておられました。

こちらの声は,おそらく
ほとんど聞こえていなかったと思います。

直接見られているわけではありません。
口を出されているわけでもありません。

それでも,レッスンをしている側には,
どこかで「聞かれている」という意識がありました。

そして,終わるとどっと疲れる。

子どもも同じです。

親は見守っているつもりでも,
子どもには見張られているように感じることがあります。

親は何も言っていない。

でも,子どもは感じている。

「見られている」
「聞かれている」
「間違えたら何か言われる」

これも,リビング学習のあるあるです。

リビング学習で大切なのは,机の場所だけではありません。

その場所に,安心して考えられる空気があるかどうかです。

■ つい口を出したくなる

子どもの横で,親がずっと手元を見ている。

「そこ,違うんじゃない?」
「なんでそんな式になるの?」
「さっきも同じミスしたよね。」
「ちゃんと問題文読んだ?」

親としては,助けているつもりかもしれません。

でも,子どもからすると,
常に採点されているように感じることがあります。

そうなると,子どもは考えるより先に,
親の顔色を見るようになります。

間違えないようにする。
怒られないようにする。
早く終わらせる。

これでは,リビングにいても,
安心して考えることができません。

伸びる家庭のリビングには,少し違う空気があります。

親は近くにいる。
でも,ずっと口を出すわけではない。

子どもが考えている時は,少し待つ

手が止まっていても,すぐに答えを言わない。

間違えていても,まずはどこまで考えたのかを見る。

声をかけるなら,
「どこまで分かった?」
「この問題,何を聞かれていると思う?」
「式を見せてくれる?」

このような言葉の方が,子どもの考える力を残します。

リビング学習で大切なのは,
親が先生になることではありません。

子どもが安心して間違えられる空気を作ることです。

■ 教材がすぐ出てこない

訪問型の家庭教師をしていると,
もう一つ感じることがあります。

リビングでレッスンをしていると,
子どもの本来の学習環境が見えにくいことがあるのです。

たとえば,レッスン中に,
「学校のワークを出してみようか」
と言うと,自分の部屋まで取りに行くことがあります。

数学のノートも,英語のワークも,普段使っている教材も,
全部子ども部屋にある。

ここにも親のあるあるがあります。

親は,
「リビングで勉強しているから大丈夫」
と思っている。

でも,実際には必要な教材が手元にない。
プリントがどこにあるか分からない。
ワークを取りに行っている間に,集中が切れる。

これでは,勉強を始めるまでに余計な手間がかかります。

本当は,どんな机で勉強しているのか。
教材はすぐ手に取れる場所にあるのか。
プリントは整理されているのか。
間違えた問題を見直せる状態になっているのか。

そういう生活に近い部分が見えると,
指導はかなりしやすくなります。

もちろん,必ず子ども部屋でレッスンすべきだ,
という話ではありません。

安全面やプライバシーへの配慮も必要です。

ただ,家庭学習を整えるうえで大切なのは,

「今,どこで勉強しているか」

だけではありません。

その子が普段,
どこで,どんな状態で,どんな教材を使って
勉強しているのか。

そこまで見ることが大切です。

学校の先生が春に家庭訪問をすることがあるのも,
学校では見えない家庭での様子を
少しでも知る意味があるのだと思います。

■ 勉強は机の上だけで起きていない

子どもの勉強は,
机の上だけで起こっているわけではありません。

教材の置き場所。
ノートの管理。
プリントの扱い。
親の声かけ。
生活音。
見られている空気。

そうしたもの全部が,家庭学習の一部です。

リビング学習で伸びる家は,
特別な教材を置いている家ではありません。

親がずっと教えている家でもありません。

子どもが,

「ここなら考えても大丈夫」
「分からないと言っても大丈夫」
「間違えてもやり直せる」

と思える空気がある家です。

リビング学習は,場所より空気

机をどこに置くかよりも,どんな言葉が飛び交っているか。

どこで勉強するかよりも,どんな気持ちで机に向かえるか。

その空気が整うだけで,
家庭学習の時間は大きく変わっていきます。

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