今週のテーマ: 私の好きな本と、学生に読んでほしい理由
■ 世界で読み継がれてきた一冊
世界のスタンダードを知るために
人生の黄昏時よりも,学生のうちに
一度は触れておきたい本があります。
それは『聖書』です。
もちろん,年齢を重ねてから読んでも,
深く味わえる一冊です。
ただ,学生のうちに触れておくと,
その後の学びや経験を受け止める土台になるかもしれません。
「なぜ今さら聖書なのか」と思われるかもしれません。
しかし,聖書の全巻または一部は
現在 4,000以上の言語で読むことができるそうです。
これほど多くの言語に訳されているという事実だけでも
世界中の人々がこの本に大きな意味を見いだしてきたことが分かります。
もちろん,読む理由は信仰だけではありません。
歴史,文学,美術,音楽,法律,倫理,そして言語を学ぶ上でも
聖書は世界を読み解くための重要な教養の一つです。
■ ヨーロッパの街角に残る聖書の影響
現代の国際社会において
西洋の文学,美術,音楽,そして法体系や倫理観に
聖書が大きな影響を与えてきたことはよく知られています。
シェイクスピアやドストエフスキーの作品を深く読み解く上でも
聖書の知識は大きな助けになります。
しかも,こうした知識は机上のものだけではありません。
実際にヨーロッパの街を歩くと
聖書に関係する言葉や人物,象徴が
歴史と文化の刻印として至る所に残っていることに気づきます。
例えば,コペンハーゲンにある
17世紀の歴史的建造物「円塔(ラウンドタワー)」。
その外壁には,神の名前を表すヘブライ語の四文字
テトラグラマトンが刻まれています。
(友人撮影)
また,キプロス共和国のパフォスには
「パウロの柱」と呼ばれる場所があります。
本当にそこで使徒パウロが鞭打たれたかどうかは分かりません。

(筆者撮影)
それでも,そうした伝承が今も残り,
多くの人が訪れていること自体が
聖書が現実の歴史や文化と深く
結びついてきたことを物語っています。
ヨーロッパを旅される際には,
古い建物や街角に,どんな聖書由来の名前や象徴が
残っているかを探してみるのも面白いと思います。
まるで歴史の中に隠された宝探しのようです。
■ 語学学習にも役立つ理由
聖書は,言語学習にも役立つ一冊です。
多くの言語に翻訳されているため,
同じ内容を複数の言語で読み比べることができます。
私は,英語,タガログ語,セブアノ語,ギリシャ語などを見比べながら
言葉の違いや表現の仕方を学ぶことがあります。
同じ内容でも,言語が変わると,
語順,言い回し,ニュアンスが変わります。
その違いを比べることで
単語だけでなく,その言語らしい考え方にも
触れることができます。
語学は,単に単語を覚えるだけではありません。
その言葉を使う人々が,どのように
世界を見ているのかを知ることでもあります。
その意味でも,多言語で読み比べられる聖書は
とても優れた学習素材だと思います。
■ 人生を考えるための古典
そして,私が学生に読んでほしいと思う一番の理由は
聖書の中に,人生を考えるための多くのヒントがあるからです。
何千年という時間が流れても,人間の本質は大きく変わっていません。
人は昔も今も
悩み,迷い,喜び,失敗し,より良く生きたい
と願ってきました。
だからこそ,古い時代に書かれた言葉であっても
現代の私たちの心に響くことがあります。
若いうちは,すぐに役立つ知識を求めがちです。
もちろん,それも大切です。
しかし,すぐに答えが出ない問いに向き合う力も
学生のうちに少しずつ育てておきたいものです。
「どう生きるか」
「何を大切にするか」
「人とどう関わるか」
「苦しい時に何を支えにするか」
こうした問いに触れることは
読解力や思考力を深めるだけでなく
人生そのものを豊かにしてくれます。
■ 世界の見え方が変わる一冊
聖書を読むことは,単に一冊の本を読むことではありません。
世界の歴史を読むことでもあり
文化を読むことでもあり
人間を読むことでもあります。
そのどれか一つにでも関心があるなら
聖書は一度触れてみる価値のある本だと思います。
学生のうちに出会っておくと
その後に読む本,見る絵,訪れる街,出会う人の見え方が
少し変わるかもしれません。
一見遠回りに見える古典の読解こそが
実は現代文や英語の読解力
ひいては論理的思考力の「OS」を強化する
最短ルートなのだと思います。
読む力や考える力は,一朝一夕には身につきません。
だからこそ,学生のうちから
良い文章や深い問いに触れる時間を
大切にしてほしいと思っています。


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